留学からの帰国前にニューヨークの摩天楼を見ておこうというのではるばる中西部から2時間かけてLaguardia空港に到着した。ワシントンD.C.をノープランで散策した時の感覚が忘れられず、今回も基本ノープランで旅をする予定だった。ワシントンD.C.の時は小綺麗な美術館や博物館を見て回るベタな感じに飽き飽きして、ホストファミリーに許可を得て一日1人で街を歩き回ったのだが、普通の観光客なら行かないであろう南側の住宅街を歩き回るのも楽しかったし、道端で新聞を売っていたホームレスと話したこともすごく良い経験になった。そんな体験を求めて今回もノープランというプランを立てた訳だが、初日を終えてそれが大きな間違いであることに気づいた。
まず空港から中心街までの行き方を調べていなかったのが最初のミスである。午後2時過ぎに空港を出るや否や適当なバスに乗り、街の中心っぽい適当なところで降りた結果、セントラルパークの北東部Harlemからニューヨークの中心的な駅であるGrand Centralまで歩くハメになってしまった。後から考えればそこから別のバスに乗れば数分で行けたのだが、街中を歩いてみたいというミーハーな思いでその選択肢を自ら捨ててしまったのだ。Harlemは小便と大麻が混ざった鼻を刺すような臭いが充満しており、チェーン店なんて甘えと思い地元発祥っぽい店で買ったバーガーの味も感じられなかった程である(そのバーガーが不味かったのか臭いで美味がかき消されていたのかは定かでない)。
セントラルパークの中を歩くと遠回りになるため東側の地域を下っていったのだが、とにかく道中のカフェが揃いも揃って高い。
信じられるだろうか、このコーヒーとパッサパサのサンドイッチが30ドルである。日本円で約4000円、日本のスタバならおしゃれなやつを6、7回は飲める値段である。パッサパサと表現した通り特段美味いということもなく、Yelpでレビューを強いられたら星3もつけないレベルだった。他のカフェ数店にも入ってみたのだがどれも同じような値段で、流石に初日でこんなに浪費するわけには行かないと思い何も頼まず店を出るというのを繰り返した。
街を下るにつれ大麻の臭いは減ってきたが、依然小便の臭いは所々で鼻を突き続けた。途中おしゃれなアパレルショップが幾つかあったのだが、どれも学生が手の届く値段ではなく、ダウンタウンに行けばもっと良い服があるだろうと予想して何も買うことはなかった。
結局3時間かけてGrand Centralまで歩き、Metro Northで滞在予定のホストマザーの姉の家があるPelhamまで移動した。Pelhamはすごく良い街で、駅周辺はまるで田園調布のような閑静な雰囲気だった。郊外なこともあって物価も安く、グロッサリーストアで買ったコーラが2ドルだった時は表示を疑ったほどである。駅近くの教会周辺では子供達が走り回り、色んな人種の人達が至る所で楽しそうに会話している光景はまさにおしゃれな郊外の住宅街という感じだった。Grand Centralまでの道中では舐められてスリに遭わないようにと目が合う人全員にメンチを切り続けてだいぶ心が張り詰めていたのだが、Pelhamに降り立つとすぐにその緊張も解け、コーラを飲みながらゆっくりと家まで向かった。
家に着いて家族に挨拶を済ませた後は明日のプランニングである。元々夜は飛行機内で読み始めた論文を読み進める予定だったのだが、ニューヨークにおけるノープランのヤバさを体感した僕は少なくとも行く場所と経路くらいは決めておこうと思い、夜の12時くらいまで計画を練り続けた。最初からやっておけば良かったのにと言われればそれはその通りであり、若気の至り以外の言い訳が思いつかないのが情けないところである。