はじめに
べき剰余関数というのはべき乗(累乗)と剰余演算(割り算の余りを計算するやつ)を一度にやってくれる関数のこと。そんなもん別々に計算すれば良いじゃんかと思いきや、累乗の指数が大きくなってくるとプログラミング言語によっては整数型のサイズをオーバーしてしまったり、そうでなくとも計算の効率が下がってしまうので、そんな時のために累乗の演算過程で剰余を取ってしまおうというのがべき剰余である。
他言語におけるべき剰余
Pythonでは標準ライブラリのpow関数でべき剰余が実装されている。
pow(base, exponent, modulo)
という感じで第3引数に法の値を入れればよしなにやってくれる。
繰り返し2乗法の実装
まず通常の累乗関数を繰り返し2乗法で実装する。繰り返し2乗法というのは累乗の指数(
TS(JS)の場合通常の整数型は最大値が
アルゴリズムとしては、
- 指数を1ビットずつ読んでいき、そのビットが1だったら底をかける
- 底を2乗
- 指数を1ビット右にシフトする
という流れになる。
const power = (base: bigint, exponent: bigint): bigint => {
base = BigInt(base);
exponent = BigInt(exponent);
//-------------------
let ret: bigint = 1n;
while(exponent) {
if (exponent & 1n) {
ret = ret * base
};
base = base ** 2n;
exponent = exponent >> 1n;
}
return ret;
};
上の2行は、JSが引数の型を読めないがために毎回引数がbigintであると教えてあげないとJSへのコンパイル後の実行時にエラーが出る、そのための記述である。これだから動的型付けは。
繰り返し2乗法に剰余演算を加える
ここまでは標準ライブラリのMath.pow()
で実現できるので、ここからは剰余演算を加えてささやかな新規性を出していく。
やることは単純で、結果となる値(ret
)と底(base
)を計算する度に剰余を取るだけ。
const powerMod = (base: bigint, exponent: bigint, mod: bigint): bigint => {
base = BigInt(base);
exponent = BigInt(exponent);
mod = BigInt(mod);
//-------------------
let ret: bigint = 1n;
base = base % mod;
while(exponent) {
if (exponent & 1n) {
ret = (ret * base) % mod
};
base = (base ** 2n) % mod
exponent = exponent >> 1n;
}
return ret;
};
これでTypeScriptにおけるべき剰余関数は完成。
終わりに
上で貼ったMDNにも書いてあるが、BigIntは暗号処理における使用は非推奨になっている。巨大な整数を扱えるサードパーティーライブラリを使うかサーバー側で別の言語で処理するのが良さげ。